Political and Economy
利権まみれの著作権行政にApple怒り心頭、権利者ばかりが保護されていないですか。
「知的財産推進計画2007」なるものが決まったらしいです。コレの策定の時、3月に行われた昨年仕様の「知的財産推進計画2006」の見直しで盛り込まれた私的録音に関する著作権者への補償金支払いをiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーにも義務づけようとする、いわゆる「iPod課金問題」の部分が未だ諦められず残っている事に対して、Appleが意見書を内閣官房に提出したそうなんですが、その内容は怒り狂っているという形容詞がピッタリなぐらい担当の文化庁を激烈に批判した文章になっているんですヨ。
アップル、文化庁を激しく非難--「私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべき」
私的録音に関する著作権者への補償金支払いをiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーにも義務づけようとする、いわゆる「iPod課金問題」に対し、アップルジャパンが内閣官房に提出した意見書の全文が首相官邸のサイトに公開された。アップルはこの制度には科学的根拠がないとして、即時撤廃すべきと強く主張している
引用先:CNET Japan:ニュース:パーソナルテクノロジー
Appleが怒り狂っている「iPod課金問題」っていうのは、1992年の著作権法改正の時に盛り込まれた私的録音補償金制度というモノに端を発しています。私的録音補償金制度とは、個人的に楽曲、映像などを楽しむ為に、対象となっているデジタルオーディオテープレコーダー(DAT)、デジタルコンパクトカセット(DCC)、ミニディスク(MD)、オーディオ用CD-R、オーディオ用CD-RWといったデジタル機器で、私的に録音・録画をすることに対して、劣化なく繰り返しコピーができるデジタル方式は、権利者への不利益が大きいという理由(私的利用は悪であると決めつけいるとも取れる)で、著作権者に補償金を支払うよう定めている制度なんですが、この制度を近年爆発的に普及した「iPod」などのデジタルオーディオプレーヤーにも対象にしようと著作権者団体が画策した問題な訳です。
これだけ読むと、保証金が上乗せされて、「iPod」などのデジタルオーディオプレーヤーが高くなるだけじゃないかと思うと思うのですが、デジタルオーディオプレーヤーの中に入っている記録装置を思い出してみると、それが著作権者団体にとって素晴らしく美味しいという事に気がつくはずです。そう、ハードディスクとかフラッシュメモリーですね。コレってデジタルオーディオプレーヤーの中だけでなく、PCや携帯電話等々に採用されていている訳ですから、外部記録装置としても使えるデジタルオーディオプレーヤーが制度の対象にされてしまうと、これらも対象となり、音楽ファイルを保存する用途に使っていない(使わない)ハードディスクやフラッシュメモリーも補償金を支払わなければいけなくなる訳です。そうなると、著作権者団体の皆様は笑い死してしまうかもしれませんね。
私的録音補償金制度について、もっと詳しく知りたい方はこちらを読んで頂くとして、制度は耳障り良い言葉で彩られていますが、機器を利用する個人は、CDとか音楽ファイルとか買っている訳で、既に保証金は支払っているとすると、二重課金なっている訳でして、見事に利権な訳ですヨ。
これだけでも、Appleが意見書の冒頭で主張した「科学的かつ客観的証拠に基づかない理由による私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべきである」は納得できるわけです。
Appleの主張を要約してみると、
- CDの販売料金に加え料金を徴収するのは二重課金にあたり、米国では著作物は「売り切り」のものであるという考え方一般的。
- 私的複製により権利侵害を被ったのであれば、私的複製ができない技術的措置を取べきで、メーカーに対して責任転嫁するのは無責任かつ自己中心的。
- 補償金制度を導入しているのは僅か11カ国、全体の6%で、国際的に見て標準的なものではない。
- 「iPod」が有料かつ合法的なコンテンツ流通の推進役となっていて、P2Pなどで違法コンテンツをやりとりするのを防いでいる。
- 「iTunes」からの売上から世界で最も著作権料を著作権者に納付している企業である。
文化庁や著作権団体に対して怒り心頭と言わんばかりですね。さらに文化庁に対しては、
著作権者団体の意見のみを汲み取り、消費者、機器メーカーの立場は無視し続けている
さらに、
アップルを私的録音録画小委員会から閉め出し、欠席裁判で物事も決める閉鎖的な体質を持つ文化庁の典型的な隠蔽体質を良く表している。(中略)はなから『結論ありき』の審議会運営をする著作権事務局には真摯な姿勢は微塵も感じられず、もはや公平公正な著作権行政を運営する適切な省庁とは言い難く、速やかに著作権行政を他の省庁に移管することを強く望む
と、一刀両断。
個人的には、ヤンヤヤンヤの大喝采ですヨ。よくぞ言ってくれました。この意見書の凄いところは、メーカー自身が著作権利権が存在する事を認めた事です。今までメーカーは利権の片棒を担いでいるので黙りでしたから、これは快挙ですヨ。デジタルオーディオプレーヤー作っている他の企業も後に続いてもらって、文化庁と著作権団体の皆様をギャフンと言わせて欲しいものです。ただ、強欲で知られる著作権団体の皆様ですからね、こういう抗議を受けても何処吹く風なんでしょうかね。官民癒着だから強固ですし。
「知的財産推進計画2007」の「iPod課金問題」もなんですが、「たけくまメモ」さんの「【著作権】「非親告罪化」今年度中に本案へ」エントリーによると、前のエントリーで書いた著作権違反の非親告罪化が、この「知的財産推進計画2007」に盛り込まれたそうで、今年度中に著作権法改正案に盛り込まれ法制化を目指すそうです。コレが施行されたからといって、マンガや同人誌が規制されたり、意図せずブラウザでヤバイファイルをダウンロードしても、すぐに逮捕されるようなことはないんだそうですが、そんなのいちいち警察が確かめようが無いから当たり前ですヨ。問題なのは、警察の裁量で罪になるかならないかという曖昧さなのです。こちらのエントリーで書いたように、警察による国民監視システムは着々と整備されているわけですから、怖さ倍増です。
非親告罪化を含む著作権法の見直しは、アメリカが日本に突きつけてくる年次改革要望書に盛り込まれているらしいのですが、これを錦の御旗にして官僚や著作権団体の皆様が、コレ幸いにと、度の過ぎた権限・利権の拡大に勤しんでいるいるように感じるわけですヨ。
自分もデザインという仕事をする人間として、権利者の保護の必要性も十分に分かりますヨ。勝手に使われたりしたら腹も立ちます。だけど、「知的財産推進計画2007」で示されている著作権のあり方については、正直バランスを欠いていると言って良いのではないしょうか。結局、国家権力や著作権団体よる監視支配が恐いという文化的に萎縮した社会を作ったら、誰もハッピーになれないと思うのは間違いでしょうか。それを気付いているのかいないのか。目の前の金の輝きに目がくらんで気付いていないと思った方が良いのかもしれませんね。しかも、利権のチラチラしてるから腹が立つ。
いい加減、自分達を犯罪者扱いする事を止めていただきたいコレにつきるんですけど...。