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流行言葉「婚活」の発祥本「「婚活」時代」を読んでみました。株式投資の煽り本の臭いがします。

「婚活」時代

最近、NHKのドラマ「コンカツ・リカツ」や、フジテレビのドラマ「婚カツ!」で、「婚活」という言葉が流行っていますね。コレは略語で正式には「結婚活動」といいます。ウィキペディアによると「結婚活動」とは、「結婚相手を求めることが一種の競争と化している社会において、自分の人生設計上有益と考えられる伴侶を探し、結婚に至らしめるために行われる一連の活動について、社会学者の山田昌弘が考案、提唱した語句。」なんだそうです。ディスカヴァー21刊の「「婚活」時代」という本が、この「婚活」という言葉の初出だそうで、その語呂の良さと、未婚者の高齢化と目立ち具合から流行言葉になっている様です。

実は、「今の若者の四人に一人は結婚できない!?」っていう帯のキャッチコピーに引きつけられて「婚活」という言葉が流行る以前に思わず「「婚活」時代」を買ってしまっていたのです。個人的に、自分は年齢的に崖っぷちから転落した高齢独身者の一人なので、今更「婚活」と言われても十二分に手遅れなので、婚活ハウツーの部分を実践する事は無いんだけどなと思いつつ、学者さんと女性ライターが、未婚者の多い日本の現状をどう分析しているのか知りたいという気持ちから、「「婚活」時代」を読んでみようと思い立ちました。

とか書きながら、婚活ハウツーを実践をすれば自分も...と考えてしまう情けなさも味わせて頂きましたヨ。

本書は、大まかに二部構成になっていて、前半が、何故現代の日本社会では積極的に「婚活」お行わなければ結婚という行為が夢の話へと成り果てしまったのか、時代的背景を解説しつつ冷徹な分析を行うという内容で、後半が、恋愛強者だけが結婚へと至る事が出来る狩猟社会となった中で、いかにして積極的に恋愛活動をし、結婚相手を見つけるかというハウツーを解説しています。

著者である山田昌弘氏と、白川桃子氏が、交互に章を担当する構成になっています。山田氏の担当章では、学者らしく問題を俯瞰で見ているのに対し、白河氏の担当章では、未婚の30代独身女性の立場から問題を見ていると思いますね。例として挙げられている男性女性それぞれの結婚できない(しない)理由の多くは納得できる内容なのですが、最終的に男性側だけに問題があるとも取れる一方的見方を感じてしまいす。良いように考えれば、多くの未婚の30代独身女性は、男性に求めているモノを正直に書いたとも言えますが、中立的な山田氏の内容と比べてしまい、女性週刊誌に掲載されているような愚痴記事に感じてしまったのは残念です。

こんな感じて「結婚」に対する両者の見解が分かれているで、読んでて混乱するのですが、著者を分かっていて読み比べると、その感覚のギャップが面白いですヨ。

なぜ現在が「婚活」の時代なのか、現在の日本社会は、経済でも、米国型の市場経済化の影響で、それまで多数を占めていた厚い中間層が消滅して、少数の富裕層と、多数の貧困層へと二極化が進行しているように、男女の恋愛も市場化が進み、恋愛至上主義の台頭と、お見合い等の結婚セーフティーネットの崩壊、長期不況による専業主婦回帰の影響で経済性重視の異性選びといった恋愛を取り巻く環境の変化によって、異性にモテ、結婚へと至る恋愛強者と、異性に嫌われ、結婚すら出来ない恋愛弱者という二極化しています。これにより結婚という法律上の契約は、恋愛強者の為の特権的なモノへと変化している事を分かります。冷徹なデータの羅列は、気分が滅入りそうですが、現実なので仕方ありません。

恋愛市場主義において、適齢期に結婚出来ている人は、 男女関係なく、周りが放って置かない本当に魅力的な人(経済性も含めて)っていう事になりますから、適齢期を過ぎても結婚出来ていない人は、魅力が無い人って事になります。つまりは、商品力が無いって事ですね。市場原理から考えると商品力無いとモノは、市場から淘汰される訳ですから、結婚出来ないのは自然の摂理です。

で、本書は、恋愛弱者が座して死を待つのではなく、恋愛強者になる為には「待つ」のではなく「攻める」に姿勢を変化させる「婚活」をしないと、結婚は出来ないと説きます。巧みな文章で、一番ショッキングな事は巧妙にぼかされていますけど、結婚適齢期を過ぎて結婚出来ていない人は、もう負けは決まっているみたいですヨ。恋愛弱者同士で「婚活」して、価値を上げなければ「結婚」出来ないってどういうことでしょう。なんか、バブル崩壊前の様に、目ざとい奴は売り抜けているのに、株をやって資産運用しないと負け組ですっていうマスコミ論理に似いていて、うすら寒いモノを感じたのは自分だけでしょうか。

色んな結婚支援サービスとか再婚市場とかもあるから、悲観はしなくていいよと一応は慰めてくれますが、経済と違って、恋愛市場のセーフティーネットは既に崩壊している訳ですから、空しく聞こえてしまいます。

さらに白河氏は、追い打ちをかけて下さいまして、恋愛市場において女性は改善するところは無いとし、男性は改善の予知だらけだから努力せよとおっしゃいます。女性に選んで貰う為に、男性を磨く。具体的には、仕事を今以上バリバリとこなして所得を増やし、身だしなみや教養は勿論の事、炊事、洗濯、掃除もこなせないといけないんだそうです。

正直、しんどい。

女性に同じ条件を求められて、条件を全てクリアできるという前提で書かれているとすれば「頑張ります」ですが、文面からは、そうは取れなかったので、一方的な要求のように感じましたね。辛〜い結婚生活が待ってるって感じる男性は多いと思いますヨ。「婚活」が必須の時代と言われてもね〜。逆効果になってませんか?

で、読んだ結論なんですが、男女共々なんだか面倒な時代になったもんだと思いましたね。個人的に結婚って言うのは、男女の足りないところを、お互いに補い合うっていうのが基本だと思っていたのですが、違うみたいです。全部男一人で家事をこなせるのならば、結婚する意味ってあるのかと疑問を感じます。精神的なバックボーンを支えて貰うだけの存在ならば、親友関係止まりでも問題無いのではと思ってしまいますヨ。

結局、「婚活」も未婚問題を解決する決定打にならないどころか、より未婚問題を深刻化してしまうのではないかと思います。だって、誰でも出来そうで誰でも出来ない事ですからね。誰でも出来るってモノを作らないと決定打にはなり得ないです。それが何かは分からないですけど。

恋愛格差も解消できそうもないし、面倒くさいから、恋愛強者の男性に一夫多妻制を認めて一杯子供作ってもらうようにして、恋愛弱者の女性には、精子バンク作ってシングルマザーを推奨。手厚い母子家庭援助をすればシングルマザーを選択する女性は多くなるでしょう。従来の一夫一婦制の結婚でも、子育ては、女親の家庭で行い、父親は必要な時だけ通ってくるという結婚形態の方がうまくいきそう。余った恋愛弱者の独身男性は放っておけばOK。後は老後が充実してれば良くないですか?

というわけで、なんとも、むなしさ漂う読後感でした。

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山田 昌弘
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starやっぱり山田昌弘!
star目新しい指摘はない
star統計的なデータは面白いが、分析が今一歩
star極めて常識的な内容でした。
starこの1冊から「婚活」という言葉が生まれた。

by G-Tools , 2009/05/08

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このページは、naganagaが2009年5月 7日 11:19に書いたブログ記事です。

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