Naga Blog

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企業再生の鍵は人にあり、「会社は頭から腐る」を読んで、膝を叩きまくりです。

会社は頭から腐る

今回読んだのは、ダイヤモンド社刊「会社は頭から腐る」。間違いなくタイトル買いです。最初、本書を本屋で見つけた時には、思わず手に取ってしまった程、強烈なインパクトを放っていたんです。色々な経営指南書を読んで、詰まるところ企業の業績不振というのは、経営トップに問題があると思っていたので、その解答が本書には書かれていると直感しましたヨ。著者を見ると、昨年4年間の活動期間を終えた産業再生機構のCOOだった冨山和彦氏という事で、実際に産業再生機構にて多数の企業再生の指揮を執った人物の体験から導き出される企業再生の処方箋を、がぜん知りたくなって、そのまま直ぐにレジに直行。買っちゃいました。

読み進めて思ったのは、本書は、経営関係の本にありがちな、こうすれば経営は立ち直るといった処方箋的な書き方は後半3分の1で、他は、企業組織がどう腐っていくかについて、多くのページを割いています。

産業再生機構下で再建を行った企業は、全国規模の大企業であるカネボウや、ダイエーから、地方の地方密着型の中小企業など様々で、実際の企業再生における現場で、起きた事例を素に書かれている為、非常に説得力のありますヨ。

凄く当たり前の事なんですが、企業組織というものを構成しているのは、血の通った人間な訳です。沈みつつある企業の社員1人々が、自分の生活を守る為に、様々なエゴが噴出する極めて人間臭い修羅場になるわけですから、経営学の本とかで語られる再生の方法を実践してみても、そんな修羅場では、説得力を持たず、うまく通用しないのも納得できるわけです。

特に、経営トップの人間性がモロに出てくる様でして、成功体験に基づく旧式化した経営構造の既得権益にしがみつき、自分の地位、立場、保身を真っ先に考える経営者が多いというのは納得な訳です。地方企業では、経営者の世襲制が更に輪を掛けていて、世代が下だるに連れて危機的な経営トップの脆弱化(バカ殿化)が、経営状況をより深刻なものにしているようです。

本書で言う「頭」とは、経営者と企業上部エリート層を指す訳で、そこから腐るというわけですから、こういう経営者の考えが、組織の下層に伝播していくのです。それは個々の社員同士の面子や保身、軋轢を生み出し、官僚主義的な社内手続きや、硬直した人事などの経営に跳ね返る事で、企業活動での利益幅の縮小を生み出し続け傾いていき、経営者、従業員お互いの幸福に寄与しない組織となる訳ですね。経営不振の企業って、組織を動かす為に人間が存在するという本末転倒な状態って事になります。

本書では「何の為に企業は存在しているか?」という、その企業の成り立ち、大原則に立ち返って考えれば、おのずと解答は見えて、そこに辿り着けば、企業再生は半ば成功したと言えるようです。相手の事を思いやる気持ちが大事にして、お客様に頭を下げ、物を売るという原点に立ち返る『初心忘るべからず』の諺通りですね。企業再生において、切っ掛けの段階では、緻密な論理で構成されたシステマティックな戦略など必要が無いというのが分かりますヨ。

そうすれば、経営はリアリズムを取り戻し、企業が目指そうという方向性と、書く社員の仕事への動機付けが噛み合い始め、社員同士のコミュニケーションも活発となるようです。

上層部は、現場の動きを妨げないように、企業として何をやらなければいけないのかを整理した上で、適材適所に社員を配置し、権限と責任を社員に与えたマネジメントを行えば、細々とした職務規定や、上司から指示命令無しに自発的に動き始め、創意工夫や相互補完を行いながら、トラブルには臨機応変に対応して、目的を達成していくような組織へと変貌を遂げる訳ですね。見たくないものは見ないという姿勢を捨てる事ができるかというのが鍵になるみたいですけど。

本書は、全体を通して、経営とは究極的には人間論に至るという事が強調されており、個々の社員の裏側にあるインセンティブ(情の論理)を洞察し理解する事が、自社の組織の腐り方をよく知る(分析する)事に繋がる様です。結局、企業再生を成功させる為の近道はなく、リアリズムと厳しさと優しさを持って遠回りする事が必要で、個人的な生き方(個人を経営する)にも通じるものがあるように感じました。読者に、経営という側面から、個人と社会のあり方を考えさせる良著だと思いますので、是非、多くの人に手にとって読んでもらいたいと思いましたヨ。

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会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」
冨山 和彦
ダイヤモンド社 2007-07-13
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おすすめ平均 star
star人間はインセンティブと性格の奴隷である!
star気持ちのよい本です
star生々しい経営の役割について
star具体的ではないですが、
starハウツー本に非ず

by G-Tools , 2008/05/14

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このページは、naganagaが2008年5月15日 00:01に書いたブログ記事です。

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