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失敗談から仕事を学ぼう。「プレステ3はなぜ失敗したのか?」を読みました。
07年の11月にSCEIから「PLAYSTATION3(以下PS3)」が発売されて2年目に入った今日この頃なんですが、ライバルの任天堂の「Wii」と、Microsoftの「X box 360°」に、販売台数で水を開けられ苦しい状態が続いていますね。今回読んだのは、晋遊社刊「プレステ3はなぜ失敗したのか?」なんですが、購入した理由は題名ですね。「PS3」は失敗機との烙印を既に押している所に引かれたわけですヨ。「PS3」は発売前から失敗すんじゃないかと言われてたので、ショックみたいなものは無かったのですが、「PlayStation2(以下PS2)」での成功から一転して「PS3」での失敗は、電器業界で失策を続けている印象が強いSONYの病巣が、ついに好調だったゲーム部門まで及んだ経過を知れるんじゃないかと思ったわけですヨ。
第1章と第2章では、「PS3」の販売戦略の問題点を整理し売れなかった理由を分析しています。、
当時、SCEIの社長であった久夛良木健氏の何らか革命を起こさなければいけないという意思が、「PS3」の理想を高く設定事に繋がり、結果的に暴走してしまった事で、商品として「PS3」のコンセプトが、ゲーム機なのかPCなのか、はたまた別のモノなのか、完全にぼやけてしまった上に、ブルーレイディスクを普及させたいSONYのお家事情も絡んで、路線の修正を繰り返した挙げ句の結果だったんですね。それだけ「PS3」は、低迷するSONYグループの希望の星だった事が分かるのですが、その期待と「PS2」での成功体験が、甘い見通しをさせる原因であった事が分かりましたヨ。『驕る者久しからず』という言葉を思い起こさずにはいられませんでしたね。
久夛良木氏の言うように、「PS3」がゲーム機でないなら、なぜファイルのブラウジングもまともに操作できないUIを持ったお手軽OSにしたのか。なぜ、ゲーム以外のアプリケーションソフトを開発しなかったのか。そこら辺のいきさつを知りたかったのですが、そこら辺を書いてなかったのは残念でした。
ただ、解せないのはAppleの「Mac」が売れているのは、使いたいアプリがあるからという指摘の部分です。書いている事は間違いじゃないですけど、そういう理由で使っているユーザーは少ないと思いますヨ。「Mac」使う原動力は、そのOSである「Mac OS X」にあると思いますヨ。手に馴染むOSがあるから道具としてPCを使いたいという気持ちにさせてくれる、そんなOSが使えるのは「Mac」だけだからというのが選ぶ理由なんですヨ。
第3章は、「PlayStation(以下PS)」の開発史で、細かく知らなかった自分としては、楽しく読めました。著者の、「なぜ、この時と同じやり方が出来なかったのか。」という問いかけなんだろうなとも思いながら読んだんですが、驕り高ぶっている時というものは、得てして初心を忘れてしまうモノなんだという事が、逆に見えてきて面白かったですね。
第4章から第6章は、「PS3」の失敗を、SONYという会社の体質から分析しています。これを読んで、SONY前会長の出井伸之氏時代は、良くも悪くもSONYが普通の電機メーカーになった時代だったんだと思いましたね。ハードからソフトまでのワンストップサービスを目指した結果、SONYに利益をもたらしたものの、何がしたい会社なのか分からなくなってしまったのが原因の様ですね。その迷走は、いつしかグループ全体に広がり、過去のSONY製品の様な高揚感を感じない普通の電機製品を生み出す原動力となったようです。その迷走ぷりが、虎の子だった「PS3」と「HDD Walkman」の失敗に繋がっているようです。ここの流れは、スティーブ・ジョブズ追放後のAppleを見ているようでしたヨ。
第7章は、「PS3」再生への道を探る為、本書では簡単な解決策を提示している訳ですが、本書が出版される直前にSCEIの社長に就任した平井一夫氏が、本書の出版後に行ったテコ入れは、本書に従った内容だった事に驚きましたヨ。SCEIが著者の意見を読んで一連のテコ入れを行ったんじゃないかと思ったからではなくて、経営の素人でも思いつく基本的な事を丹念に行った事に驚きを感じたわけです。そんな基本的な事をしただけで、11月の「PS3」の急激な販売数の増加したという事実は、ゲーム機を売るのには久夛良木氏が考えたような奇策は必要がなく、分かり易いコンセプトが必要だったという事ですね。Appleの売り方を手本にしたんだろうけど、久夛良木氏は何かを間違えていたんでしょう。きっと。
いろんな意味で、仕事として何かを生み出している人間にとっては、大変参考になる失敗解説書でしたヨ。後は、読んだ人間が、この失敗談をどう自分の仕事に結びつけていくかですね。『驕る者久しからず』、『初心忘るべからず』、昔の人は上手いことを言ったモノです。
- プレステ3はなぜ失敗したのか? (晋遊舎ブラック新書 002)
- 多根 清史
- 晋遊舎 2007-09-10
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- どうしたらプレステ3は成功するのかの本も書くべきでは
- 内容はおもしろいですが
- タイトルで売り出そう感が否めない
- 結果論で物を語るのは簡単な事です。
by G-Tools , 2008/01/07