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安易なコレステロール低下剤処方に警笛を鳴らす「コレステロールに薬はいらない!」を読みました。

コレステロールに薬はいらない!

今、自分がせっせとダイエットに励む理由は、春の健康診断後の再検査で、高脂血症と境界性糖尿病と診断されたからなんです。それからは、運動と、日々の食事の改善で、肥満の解消と血糖値とコレステロール値の低下を図ってきた訳なんですが、体重の低下と相まって血糖値は、基準値に収まったのですが、LDLコレステロール(俗に言う悪玉コレステロール)値は、3回目の検査でも下がっておらず、コレステロール低下剤を処方されてしまったんです。2ヵ月程度飲み続けていたのですが、日によっては倦怠感が酷く、仕事が手に付かない時もありました。そんな時、本屋で見かけたのが、角川書店刊の「コレステロールに薬はいらない!」でした。帯に書かれていた「コレステロール低下剤で年間10000人が死亡の疑い!?」というコピーは、別の意味で心をグッと鷲掴みにしてくれたので、買って読むことにしました。

序章からいきなり、日本動脈硬化学会が定める基準値である、HDLコレステロール(俗に言う善玉コレステロール)値とLDLコレステロール値を合わせた総コレステロール値220の否定から入ります。この後、2つの章を使って、コレステロール値が高めの人の方が長生きであり、過度にコレステロール値を低下させる事は、動脈硬化や心筋梗塞の予防にはなっても、逆に癌を発生させるリスクが高まるという自説を、国内外の実験や統計データからコレステロール低くする危険性を解説していきます。そこに書かれている事は、他の高脂血症を扱った本の内容とは、真逆で、現在必死になってLDLコレステロール値を下げている自分にとって、相当ショッキングでしたヨ。

その上で著者は、これだけ高脂血症患者が溢れている日本人なのに、日本より基準のずっと緩い欧米人と比較して心筋梗塞の発生率が大幅に低い事に疑問を呈し、日本動脈硬化学会が示すコレステロール基準が、他国よりも意図的に低く設定している為、本来患者にならないレベルの人達まで、患者にしてしまっているどころか、癌患者をも大量に生み出しているのではないかと書いています。

さらに第3章では、畳みかけるように、コレステロール低下剤の開発の歴史を織り交ぜつつ、薬の危険性をに警笛を鳴らしまくります。なぜ、コレステロール低下剤を使って無理に値を下げると、逆に死亡率が高くなるのは、細胞膜、ホルモン、胆汁酸等の材料を運ぶ役割をもったコレステロールは、体の新陳代謝にとって必要不可欠な物質である為、材料の供給といった役割を受け持っているLDLコレステーロールのみを減らすということは、材料の供給を減らした上で、材料の搬出を受け持っているHDLコレステロールの搬出量が増えるという事で、出ていく量の方が多くなるわけですから、細胞膜、ホルモン、胆汁酸等の機能が低下してしまうというのは、素人でも分かる理屈です。その影響で、免疫機能までも低下してしまい、細胞が癌化が促進されるとの事。また、癌だけでなく、免疫低下による感染症の他に、薬の副作用として神経障害や鬱病、横紋筋融解症といった病気になるリスクも高くなるそうです。ナカナカのヤバさですナ。

なってたって、臓器移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤の一つとして使われるぐらいですから...。

著者も、コレステロール低下剤の効果も認めつつも、高いリスクが伴う薬なので、少しぐらいコレステロール値が高いからといって、安易にコレステロール低下剤の処方は避けるべきで、食事や運動の改善をした上で、最終手段として使うべき薬なのだと主張しています。

この本の基準に、自分のコレステロール値を当てはめてみると、軽度の肥満(改善しつつある)、境界性糖尿病という危険因子を含めても、コレステロール低下剤の処方はされなくて良く、適正なコレステロール値を維持する為に、食事や運動すれば問題無いということになります。

本書を読み終わって、正直言って、日本動脈硬化学会は、心筋梗塞予防という事だけでコレステロール基準を設定しているんじゃないかと思っちゃいましたね。病気というモノは、遺伝とか体質とか、患者の個性にあった治療をしないと意味がないと思っている医者が多いのかと思っていましたが、そうではないのかもしれません。最近は自分の専門分野しか診ない医者が多いそうなので、お仕事と割り切れば、こういう考えもになるのも分からないではないです。個人的には、医学も学という文字が付く以上、永遠に未完成であり、定説(常識)などというものは存在しないと思っているので、日本動脈硬化学会の主張も、この本に書かれている事も、全て正しいとは思いませんが、少数でもこういった異論を唱える声がある以上、今の基準も再考する必要があると思います。素人意見ですが...。(医者は権威主義なので無理だと思うけど...。)

本書では、日本動脈硬化学会が定めた世界的にも厳しい基準値自体が、製薬会社のコレステロール低下剤大量販売を手助けする為に、あえて厳しくしているのではないかという疑念を書かれていましたが、自分もこの部分は同意します。薬害エイズ事件、薬害C型肝炎事件と、厚生労働省、医学界、製薬会社の利権癒着が引き起こしたこれら事件の背景と似ている部分が多いからです。ここ数年、癌患者は増加傾向にあるのですが、これが過度なコレステロール低下剤の処方が原因だとすれば、我が国最大の薬害事件となる可能性がありますね。ただ、過去の事例からみても、被害が拡大する前に何らかの対策がとられたという事は皆無なので、放置プレイになるのは間違いないと思うと情けなくなりますね。

医者の言う事を、信じて律儀にコレステロール低下剤を飲んでいるのは自殺行為じゃないのかと気分にさせてくれるナカナカの良書でしたヨ。結局、信じるか信じないかはあなた次第という事です。自分的には、本書を読んで、処方されているコレステロール低下剤は、律儀に飲まなくなりました。ついでに、今かかっている病院を変えようかなと思っています。ちょっと、簡単にコレステロール低下剤に頼り過ぎだと思うので、別の医者の診察を聞いてみようと言う事です。

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by G-Tools , 2007/12/20

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このページは、naganagaが2007年12月19日 23:55に書いたブログ記事です。

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