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悪の国家といわれているナチスドイツのもう一つの姿を「ナチスの発明」で知りました。

ナチスの発明

最初のこの彩図社刊「ナチスの発明」を本屋で発見した時、赤い表紙にナチス時代のドイツ国旗であるハーケンクロイツがデカデカと描かれていて、かなり強烈な印象を持ったんですヨ。ここがドイツだったら店頭に並べられない程ヤバイ表紙なんだろうなと思いつつ帯に書かれた「あの世紀の発明品開発したのは「ナチス」だった!」というコピーに引っかかってしまい買ってしまいました。大戦中のユダヤ人虐殺などで、かなりマイナスイメージが強い為か、ナチス関係の本って負の遺産を追ったモノが多いのです、物事には必ず陰と陽二つの側面があり、この「ナチスの発明」は、その正の遺産を紹介しているのが面白いと思ったのですヨ。

本書は4つの章で構成されていますが、大まかには2部構成になっていて、第1章と第2章は、ナチス時代のドイツで発明された科学技術や社会システムが紹介されていて、第3章と第4章は、ナチスの生い立ちから、幹部の紹介、負の科学技術と社会システムが紹介されています。

第1章と第2章で紹介されている事例には、ナチス時代から現代に直結している科学技術や社会システムが数多く存在する事に驚かされます。「夢の高速道路「アウトバーン」」「ゴム・衣類を科学で作る」「夢の鉄道「リニアモーターカー」」の項とかは、初めて知る話もありナカナカ興味深い内容でした。中には、現在主流の技術とは結びつかない廃れた技術(フォッケウルフ方式のヘリコプター等々)とかも発明として紹介しているのも受けられるのでちょっと違うかなと思ったりもしたのですが、それを運用する方法を当時のドイツが確立したのではという事で解釈しています。

第2章で書かれている社会システムでは、何気なくいつも自分達が利用している制度が、ナチス時代のドイツで生まれたモノだと知って驚きでした。まだ、「バカンス・海外旅行--労働者にも長期休暇を」 の項等々、現代日本よりも進んでいるんじゃないのかと思われる部分があり、なんか当時のドイツ人に進歩していないんじゃないのと言われているようで気恥ずかしいモノがありましたね。他にも大企業に大増税を課したり、軍需産業等の企業が政治家とつながる事を禁止する汚職対策、為替相場などのマネーゲームで不労所得を得る事を禁じたりと、いわば勝ち組の発生を許さない姿勢は、まさに労働者を大切にする社会主義ですね。ナチスの正式名は日本語で国家社会主義ドイツ労働者党といって社会主義を標榜しているわけですから、当然といえば当然なんですけどね。ちなみにナチスは反共です。

前半だけ読めば、なんてナチス時代のドイツは素晴らしいんだと錯覚してしまいそうなのですが、第3章と第4章で書かれている事を読むとそれは見事に違うという事が分かります。それらは全て第一次大戦に敗北して、戦勝国に精神的にも経済的にも地を這うような境遇に貶められた事に対する恨み(反発心)から来ているのです。そもそもから歪んでた訳ですね。それが、ナチスに強烈な反ユダヤ主義と優生学を生み出すきっかけとなり、人心を巧みに掌握する広報活動を通じて劣等感に苛まれるドイツの人達にナチスのドイツ人のみが享受できる独善的なユートピアを作り出そうという思想が支持されていった訳です。上記の様な発明等々もそれをくすぐる為に必要だったとも言えます。挙げ句、誇大妄想的な党大会や、世界首都ゲルマニアの都市計画などに繋がり、やがて戦争へと突入していった訳です。これが、独善的な思想でなければ、戦争も起きず後世に残る偉業として称えられたのかもしれないと考えたりするのですが、それは当時の状況が許さなかったでしょう。

読み終えて思ったみて、個人的に今までドイツが第2次世界大戦を引き起こした経緯がイマイチよく分かっていなかったのですが、戦争までの経緯の一部を知って勉強になりました。また、物事には全てにおいて表裏陰陽があり、ナチスも例外ではなく、極悪国家として歴史に刻まれているナチスドイツでも、同じように正の部分では多大な貢献を行い、負の部分では多大な損害を与えた訳です。歴史は勝利者が作ると言う事なんですね。

なかなか、この「ナチスの発明」なんですが、軽い内容のモノを読んだつもりだったのですがイロイロと考えさせられましたヨ。

photo
ナチスの発明
武田 知弘
彩図社 2006-12
売り上げランキング : 72932
おすすめ平均 star
starナチスが生み出した「正」の遺産
starナチスによる支配を成立させた時代の「ドイツ」とはどんな社会だったのか、どんな技術をもっていたのか
star「ナチスの発明」の定義が不明

by G-Tools , 2007/04/27

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このページは、naganagaが2007年4月27日 01:15に書いたブログ記事です。

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