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理不尽に搾取されるアニメ業界から透けて見える、日本のクリエーターのお寒い現状。
今や、アニメといえば日本の映像作品を語る上で外せない存在になる程までに成長し、世界的にファンを増やしていますね。いい大人がアニメが好きと言っても、かつてような白い目で見られなくなった事に、古株の人間としてはいささか戸惑いもあったりします。今や、テレビアニメも年間100本程度が作られ(殆ど深夜枠が占めているけど…)、年間の映画興行ランキングでアニメ映画は毎回ランキング上位を占める事が多く、劇場用作品も多く作られるようになりました。さぞかし、現場のスタッフは羽振りがよろしいのかと思いきや、実はそうでもないようなんですヨ。「痛いニュース(ノ∀`)」さんの「日本のアニメ業界、これからどうなる?…アニメーター人手不足は常態化、技術力低下も懸念」エントリーによると、相変わらず、現場のアニメーターさん達の労働環境は劣悪といって良い状況にあるみたいなんです。
これは、アニメ業界の構造自体に問題がありまして、アニメの制作会社は、テレビ局や広告代理店の下請けとしてアニメ制作を請け負っているんですヨ。下請けっていうことですから、スポンサーから制作費を元請けや中請けが搾取した上で、実際の制作費が現場に降りてくる構造になってます。では、現場はどのくらいで制作しているのかというと、全制作費の16%前後なんだそうです。宣伝費やら諸々の諸経費に必要だからという理由だけで80%強を持って行かれてるんじゃ、正直、技術を要求される仕事として成立しているとは思えないです。
超一流のアニメーターや、スタジオは別として、一般的なアニメーターで毎日14時間以上の労働で月収10万円前後(国が定める最低賃金以下)が相場なんだそうですヨ。アニメの制作スタジオは、大半が首都圏に集中している事を考えると、住居費と生活費の高い場所に住んでいながら、地方都市並の給料でどうやって生活しているのか不思議です。会社に寝泊まりし、仕事と生活を一体化するワーカホリックの様な生活をしているのかと思うと、まさにワーキングプア。
職業としてのアニメーターでは喰っていけない訳ですから、離職率も多く、年間の放送本数は増える一方なのに、アニメーターの数は3500〜4000人と横ばいで増えていないっていうか、増えるわけがないですヨ。こんな状態な訳ですから、後進の育成なんて出来る筈もなく、技術力の低下から質を維持していくのが難しくなってきているようなのです。今は、TVゲーム業界が冬の時代で人材流出も少なく、動画とか彩色に中国・韓国のスタジオを使っているから何とか保っているけど、自国で商売が成り立つようになれば、いずれ離れていくことは間違いなく、こんな状況を維持できなくなるのも時間の問題だと思われるのです。
世間の評価だけが一人歩きしている状態で、それが現場へ還元されておらず、アニメーターの情熱だけで保っている業界というわけですな。ようは、下請けいじめが大好きという日本の産業構造の象徴みたいな業界だと言う事ですね。ピンハネ屋が一番儲かるですヨ。
こんな状況で、日本が海外に輸出できる文化の一つというのはお寒い限りです。恐らく、数年後には一気に質の低下が起こると思われ、その時には手遅れ、日本のアニメ業界は死にましたっていう事態もあり得るかもしれませんね。
今回話題にしたアニメ業界に限らず、コンピュータソフト業界、ゲーム業界、広告業界といった人の才能が無いと成立しえない業界で、現場の人間というのは安い賃金で能力を浪費させられる奴隷みたいな扱いをされているんですヨね。海外ではクリエイティブ分野の職業はそれなりの評価を受けているのですが、日本では文化的な背景が違うのか異常に評価が低いんですヨ。自分も仕事柄、海外のデザインスタジオが作成したWebサイトを見て回る事が多いのですが、時間をかけて手間をかけたと思われる凝ったデザインや、圧倒的に少ない制作実績で会社が回っている事に驚きを隠せません。貨幣価値が違うので一概にうらやましがるのは軽率かもしれませんが、クライアントから十分な制作費を貰っているって事だけは間違いないようです。
文化を創っている連中が冷遇されるのは、どうかと思いますけど、汗水流さずに仕事をして楽して儲けるかという事を考えた連中が、作り上げた社会ですから、ナカナカ待遇改善は夢のまた夢でしょう。コレばかりは選挙に行ってもどうにもならないでしょう。結局、細々と生活しながら、搾取する連中を儲けさせる質の高い仕事をしていくしか無いんでしょうね
辞めたところで、この仕事が好きだしコレしかできないですヨ。だから足下見られるのか…。orz