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Political and Economy

「ホワイトカラー・エグゼンプション」は、中小零細企業従業員も確実に締め上げる制度だと思います。

SAFETY JAPAN」で連載されている、モリタクこと森永卓郎氏のコラム「小泉構造改革をどう生きるか」の「第46回 残業代なしでただ働きを強制される時代の到来 〜 ホワイトカラー・エグゼンプションって何? 〜」で、今、社団法人日本経済団体連合会(以下経団連)が導入に向けて政府に圧力をかけている「ホワイトカラー・エグゼンプション」を解説していました。横文字に弱い年代には、呪文のような言葉ですが、意味は割とカンタンで「ホワイトカラー・エグゼンプション」とは下記の意味があります。

エグゼンプションとは「除外」という意味。つまり、ホワイトカラーを労働基準法の労働時間規制から除外する制度である。

引用先:SAFETY JAPAN:小泉構造改革をどう生きるか

では、いったいどういう制度なのかいいますと、

これまで、管理職でない限り、工場労働者もオフィス労働者も定められた一定の勤務時間を超えたり、休日出勤などをした場合は会社側が割増賃金を支払わなければならなかった。

現在の労働基準法では1日8時間・週40時間を超えた労働には、通常賃金の25%増、休日出勤では35%増の賃金を支払うことになっている。この規制対象から非管理職のホワイトカラーも除外してしまおうというのがホワイトカラー・エグゼンプションである。

昨年6月、日本経団連が発表した「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」では、ホワイトカラーにおいて“労働時間”と“非労働時間”の境界があいまいになり、ホワイトカラーに適した労働時間制度の構築が必要であると述べられている。

つまり、建前では、サービス産業化が進んだいま、サラリーマンの働きを時間だけではとらえきれないので、従来型の時間評価はやめて、成果評価でいこうということだ。

引用先:SAFETY JAPAN:小泉構造改革をどう生きるか

というわけで、残業大国日本の現状を解って言っているのかと思う内容(さらに詳しく経団連の主張を知りたい人はこちら)となっております。この制度の本家アメリカでは、研究者や、技術者、事務職員など労働時間の区分けが曖昧にならざるえないホワイトカラーを対象に、労働基準法定められた規制から除外して好きなだけ働き、給与はその成果で払われるようになっているらしいんですが、日本の場合は、年収400万円以上の事務労働者を一律に対象とする仕組みになっていて、これだと、都市部で働いているホワイトカラーは全て対象なる事になりますね。森永氏が書いているように、この制度の経団連側の狙いとして、自分達の経営で負担になっている残業代の支払いを安く上げたいのが本音でしょうね。成果主義の導入を促進するのが目的だなんて、もっともらしい事書いてますけど、経営者に悪用されるのがオチなんじゃないですかね。サービス残業を強制させる大義名分を与えるようなモノですヨ。

そして、長時間残業させても残業代を支払わなくてすむならば、必然的に残業が増え、社員の健康面や精神面に負担がかかる。

また、共働きの場合、家事や子育てを担っている女性への負担が大きくなる。子供を産もうという意欲が失われ、ますます少子化に拍車がかかるおそれもある。

引用先:SAFETY JAPAN:小泉構造改革をどう生きるか

と、森永氏が懸念している様なことは間違いなく起こるでしょう。しかし、中小零細企業だとさらに事態は深刻化すると思いますヨ。

例えば、年収が400万円以下のサラリーマンが、会社の命令でバリバリ働かされた挙げ句、残業代プラスで年収400万円を突破したら、次の年から残業代一律カットされて結果的に年収ダウンという事態も考えられますよね。こうなれば、経営者にとって働かせ得になるわけですヨ。

また、今のパートさんみたいに、扶養控除の適用年収103万円を超えない年収に調整される様に、制度を盾にとって、最初から残業代定額制にされ年収400万円以下になるように事前に調整される場合もあるでしょう。安い給与ベースに、安い残業代で、人を使うというやり方をする企業も多くなると思いますヨ。こうすれば、残業代の上限が自動的にできるので、経営者はそれ以上支払わずに済むというわけですな。この制度は、自分の懐に入る儲けの幅を広げられるという意味では、福音以外何者でもありませんよね。経営者が得しようと思えばどうにでも操作できる制度だと思いますヨ。

現代日本て、小泉改革の影響で拝金主義的な経営がヨシとされているから、より巧妙にこの制度を悪用する酷い経営者も大勢現れるでしょう。

ただ、地方の場合、この制度にあてはまる年収を得ていないホワイトカラーの方が多いと思うんですが、すでに上記のようなやり方をされて、どんなに頑張って昇進したとしても、そこそこの年収に押さえ込まれる仕組みが出来上がっちゃっているので、この制度は、それを合法化するだけなんです。なので、地方で働くホワイトカラーにとっては、よけいにタチが悪い経営者を生み出す温床になりそうな予感がしますヨ。

それと、勘違いされると困るので、森永氏に対して反論も書いておきます。氏が書いているクリエイターやマーケッター、デザイナー、インベストメントバンカーなどの専門職の仕事は、確かに労働時間で測ることは難しいんですけど、クリエイターや、デザイナーの場合は、殆ど自営業者でサラリーマンっていうのは少ないんですヨ。年収1000万円なんて、そんな収入があるのは、どこぞの売れてる大先生だけですヨ。例え、会社形態になっていても、殆どが零細なので、ここでサラリーマンしている人は、この制度で残業カットなどされなくても、既にカットされている人が多く、多くても年収400万円行くか行かないかが多いんじゃないですかね。日本人は文化には金を出さないんです。

こういったムチの部分だけではなくて、この制度にはアメと思われる部分もあります。

労基法の改正では、もう一つの議論もある。これはいい話だと思うが、大半の企業で就業規則に盛り込んでいる「兼業禁止規定」を無効にする改正だ。無効にすることはほぼ確定だという。

引用先:SAFETY JAPAN:小泉構造改革をどう生きるか

ようは、兼業禁止規定を無くしてやるから、足りない分は自分で稼げっていうやつですね。よく考えれば、コレがアメなんかじゃないことは一目瞭然ですよね。経営者にサービス残業を強いられるのであれば、兼業なんてやってられる訳ないじゃないですか。この兼業禁止規定無効化に対して森永氏はこう言ってます。

しかし、問題はホワイトカラー・エグゼンプションとセットになっていることだ。終電まで働かされても、給料が減る分、土日に兼業して取り返そうとしたら、それこそ休みはなくなる。

だから、この制度は年収の少ないサラリーマンを痛めつける制度なのだ。これからどのような改正案がまとまるのか注目しなければならないが、私は年収1500万円以上のホワイトカラーに適用すればいいのではないかと思っている。

引用先:SAFETY JAPAN:小泉構造改革をどう生きるか

やるのであればですけど、自分的には年収1000万円以上の方がイイと思いますね。普通の雇われ仕事で年収1000万円稼ぎ出す人間なんて、経営者の親族か、ワーカホリック以外何者でもないと思いますから(多少偏見入ってます)。

仮にこの制度が始まって、すべて経営者が、社員に残業をさせない会社体制作りをしてくれれば問題ないと思いますが、現実として、それが出来るのは体力のありあまってて、大量に従業員を雇用できる大企業だけでしょう。他の中小零細企業の殆どは悪用されて働く環境が、今よりももっと悪くなるだけでしょうね。

さらに、今後、税金と、社会保険費、年金と増額がされるでしょうから、さらにサラリーマンの収入は落ち込み。国民の大半は下流化し、今よりも格差は確実に広がるでしょう。この制度のお陰で、政府や財界が標榜している(アメリカの意向?)「20%が富、80%が貧乏」というアメリカ型資本主義社会が完成する事になるでしょう。ただし、経営者バラ色の時代は長く続かず、大量の過労死で労働力を失いながら社会は活力を失っていき、しいては日本自体が沈んでいくことになると思いますヨ。

本当にコレでいいのか日本…。orz

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このページは、naganagaが2006年8月30日 23:03に書いたブログ記事です。

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