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小松左京氏の自叙伝「SF魂」を読みました。
日本のSF文学界の第一人者といえば、小松左京氏をおいて他にはないでしょう。SFに興味が無くても、「日本沈没」「復活の日」「首都消失」「さよならジュピター」と映画された作品がされた作品が多く、最近では、代表作の「日本沈没」がリメイクされたので、これら題名を一度ぐらい聞いた事があると思います。とはいっても、ここ20年ほど執筆活動は中断されたままなので、新参のSFファンには馴染みが薄くかったりして...。で、この新潮社刊「SF魂」は、小松左京氏による久々の著作なのですが、残念ながらSF作品ではなく、自叙伝だったりします。共著になりますが、先日「日本沈没 第二部」が小学館より刊行されましたので、最新作に触れたい方はどうぞ。
と、長年のファンのように書いていながら、同氏の著作を読むのは今回が初めてだったりします。自分と小松左京作品との関わりは、もっぱら映画だけですね。評論本とかは、楽しく読めたちゃうのに、小説は何故が最後まで読めたって事が無い変なタイプなんです。そういうわけで、実は、思いっきり買おうか迷った本なんですが、小松左京氏が関わった1970年の「大阪万国博覧会」開催までの経緯が知りたかったのが、購入に至った最大の要因です。
自叙伝なので、氏の小さかった時から振り返っているのですが、氏がデビューしてからの、日本でのSF文学黎明期の苦労話とか、SF文学が市民権を得るに伴って氏の執筆活動と経済状況が好転していく様は、大変面白かったですね。マンガやアニメの隆盛とリンクしている事はあまり触れられていませんでしたが、そこら辺も加味して読むと、さらに楽しめますヨ。
肝心の「大阪万国博覧会」開催の経緯は、意外とあっさり流されちゃって、ちょっとガッカリだったんですが、後の「さよならジュピター」初監督のドタバタは面白かったので、まぁ良しとしましょう。(ナニを)
で、全部読んで思ったことは、小松左京っていう人は、作家という枠には収まらない人なんだなということでしたね。氏のこういった幅広い活動が、今の日本の科学技術の発展と、オタク文化を日本が生み出す原動力になったのが感慨深いですね。