Book
「ウェブ進化論」で、これからのWebの流れを知る。
今回読んだ筑摩書房刊の「ウェブ進化論」って、最初に書店で見かけた時には、既にベストセラーになっていたのですが、自分としては珍しく帯のキャッチコピーに引きつけられることもなく、内容の方も知っている事の方が多いだろうと思って買うところまでは至らなかったんです。それがナンで買うところまで行ったのかというと、ニュース番組で著者が本の内容について短いインタビューを受けていたのを聞いて、面白そうだなと興味を持ったのが切っ掛けになったんですヨ。実際に読んでみると、題名に進化論と入れているだけあって、この世界に疎い人達にも理解しやすいように専門用語も少なく丁寧に解説していて、今、Webの世界で起きている変革の流れを、読み取るには最適な内容になっています。
ただし、著者がIT企業の経営コンサルタントということもあり、内容は、どちかというと経営について書かれたビジネス書と言った方がしっくりきます。Googleというネット企業の経営について分析が主になっていて、それを理解するために用語解説の部分があるといった感じです。
この本の中でよく使われる言葉に「あちら側」と「こちら側」というのがあるのですが、「あちら側」とはWebの世界の事で、「こちら側」とは現実の世界という意味です。この2つの世界では、モノの動きは全く違っていて、「こちら側」の約束事は役に立たたず、売れる商品だけ探っている商売は成り立たない事や、資産を囲い込んで、その所有権で食っていくといくという権利商売も、今後さらに成り立ちにくくなっていくだろうと感じました。
ただ、「あちら側」と「こちら側」が、新体制と旧体制に分かれて対立していくという構図は、正直言ってよく分かりませんでしたネ。また。「あちら側」が「こちら側」を駆逐していくという論は、乱暴な気がしました。昔言われていた情報の電子化が、紙媒体を駆逐するといった話しに近いモノがありますネ。それから大夫経ちますが、今だ紙媒体は、駆逐されていませんよネ。これから、Webの商取引がPCから離れて、イロイロなメディアで広範囲に利用され、様々なデバイスが境界を感じることなく使われる時代(映画スタートレックようにコンピュータを使う事が出来れば)が来れば、筆者の言うように対立してくる可能性はあるかもしれませんけど、50年とか100年とか、かなり先の話しだと思いますヨ。それでも、人が店に行って商品を買うという行為が消えてに無くなることは無いと思いますけどね。
ただ、GoogleとMicrosoftの過大評価は、ちょっと閉口。内容を分かり易くする為に、先んじて概念を作った企業とかは、触れられてもいませんでしたね。ORACLEとかAppleは蚊帳の外ですか、そうですか...。
で、最後の結論はビジネス書らしく、情報を与えましたので、どう企業を経営し、Webの新たな地平を生み出すかは、アナタ次第というので終わっています。それでは読んだ意味が無いという意見もありましょうが、一介の経営コンサルタントがこれからの方向性を簡単に予見できる世界なら、とっくの昔に世界はGoogleみたいな企業が、もっと乱立している筈ですからね。それは、かなり難しいことだと思いますから、こういう結論でも仕方がないんじゃないかと思いますヨ。
結局、最先端やってるとこが四苦八苦しているのを横目で見ながら、そこで生み出された技術を、めざとくチョイスして、少しずつ変えていくしか、「こちら側」からナカナカ抜け出れない雑多な企業が、Webを利用する最良方法かもしれないですね。
最終的には、1つの企業の所有する広大な空間の中で、他の企業が踊るっていう事態が待っているのかもしれません。そういう警告も含んではいても良かったと思うけど...。
- ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
- 梅田 望夫
- 筑摩書房 2006-02-07
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by G-Tools , 2006/07/31