Book
「他人を見下す若者たち」は、今の日本人を理解するには、最適の本かもしれません。
なんかいつものことなんですけど、講談社刊の「他人を見下す若者たち」も、「「自分以外はバカ」の時代!」というキャッチコピーが書かれた帯を見て、興味が湧いてきて読んでみたくなり買った本なんですヨ。こんな感じて、帯に釣られて他にもイロイロと本を買い込んじゃってたので、大夫後回しになっていたのですが、ようやく読み終わりました。今の若い奴らの精神構造を「仮想的有能感」というキーワードで、それの証明を試みる内容なんですがね。まぁ、学者先生が書いている本なので、内容が論文的で、苦戦しましたヨ。同じような説明が回りくどく何度も出てくるし、数字や引用も多いので、読んでいるとすごく疲れて眠気が来るので、1日5ページなんて日もありました。人間の精神分析は好きな分野なのと、テーマ自体が面白いので、何とか最後まで読もうというモチベーションは維持できましたので、なんとか最後まで行った感じです。
この本の中で、一番印象的な言葉が、「仮想的有能感」という言葉なんです。これは「他人を見下す若者たち」の過程で著者が作り出した造語ですので、馴染みがないのは当たり前なんですが、どういう意味かと言いますと、
仮想的有能感
過去の実績や経験に基づくことなく、他者の能力を低く見積もることによって生じる本物ではない有能感
引用先:他人を見下す若者たち
と、言う意味になっています。これでもちょっと難しいので、もっと噛み砕くと、メディア等を通じて知り得た情報を、あたかも自分が経験したように思い込み、自分は有能なんだと勘違いした上で、他人は自分より劣っていると、さらに勘違いしている自分勝手な感覚っていうことですかね。
前半は、このキーワードを使って「今の若者は...。」的な、使い古されたロジックで話しが進んでいくのですが、後半に入ってくると、この「仮想的有能感」は、別に新しい概念って言うのではなくて、こういう感覚を持った人は、いつの時代にもいたらしいという話しになってきます。近年、「仮想的有能感」を持った人の比率が高くなってきたので、若者世代を中心に多く遭遇するようになったから目立つようです。高度経済成長から伸び始め、バブル崩壊からの伸びが大きいようですね。
この本はあくまで、現代の若者の精神を分析しているだけなので、自分の勝手な解釈なんですが、
戦後、特に高度経済成長以後の日本って、良いも悪いも吟味せずにアメリカ人の考え方だから素晴らしいに違いないと受け入れてきたツケがこういった形で現れているんじゃないかと思うんですね。最近では、アメリカの負の部分(貧困層の文化)を、カッコイイという言葉だけで多く受け入れた挙げ句。さらに進んで金さえ儲けてればエライって感じになっちゃてるから、子供は作るだけで、金儲けに忙しく、しつけや教育は他人任せっていう親が結構いるみたいですからね。「仮想的有能感」な親が、けっこう居るって事なんでしょう。今、「仮想的有能感」な若者が多いって言うのは、前の世代から続く「仮想的有能感」の連鎖が、子供の数分、ねずみ算式に増えていった結果ということになりますね。戦後、日本人の心が荒れていくのと、教育が崩壊していた過程を描き出しているようで、自分的には凄く怖い本だと思いましたヨ。
変な殺人事件とか起きまくっても何ら不思議じゃないと思いましたね。
この「他人を見下す若者たち」って本に書かれている「仮想的有能感」の研究は、まだ始まったばかりなので、結論じみたことは書かれていませんが、どうも、「仮想的有能感」は自分で変えていくしか改善の方法はないようですね。ということは、周りができる事って、当人に嫌われても、周りは大変なんだぞと言っていくしか方法が無いって事か...。鬱になりそうだ。
本の最後に書かれている内容からすると、「仮想的有能感」な人の数を減らしていくには、昔の日本を取り戻さないといけないみたいですが、今の日本が目指している所は、それとは逆の未来ですからね。これから、悪くなることはあっても良くなるということは無いんじゃないかと思いますね。これも、少子化が止まらない理由の一つじゃないかって思います。