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「男たちの大和 YAMATO」さらば日本よ、旅発つ艦は...。

男たちの大和 YAMATO

太平洋戦争(大東亜戦争)終結から60年という節目の年、2005年の締めくくりに公開された「男たちの大和 YAMATO」へ行ってきました。日本映画史上最高額の30億円という制作費をかけたという特撮や、戦艦大和の実物大セットに話題が集中しがちなこの映画ですが、今までの日本映画界が作ってきた戦争映画とは違うスタンスで描かれていたのに驚きました。どうしても今までの日本が作ってきた戦争作品は、戦争や、旧日本軍の負の部分ばかり強調され過ぎた左翼的で自虐的な内容だったので、見終わった後、自分は馬鹿な戦争をやったダメな日本人の一員なんだって気分になってしまったものですが、今回はそんな気分にならなかったのが嬉しかったですね。

この作品は、全く米軍側の動きを描かず、兵士とその家族や恋人の心情にのみスポットをあて、当時の日本人は「どんな想いで戦争を生きていたのか」を丁寧に描いています。今の時代の日本人からは一見無意味に思える特攻という攻撃方法に、どんな意味があったのかを、改めて再確認できました。彼らは、上の人間に騙されたり、洗脳されたりしたのではなく、国を守るんだっていう確固たる意思(そうじゃない人もいたとは思いますが...)を持って、自ら戦いに挑んだんですよ。そんな当時の若者たちの姿に涙腺がゆるみっぱなしでしたよ。ただ、同時に自分たちの今の平和と繁栄は、こうして死んでいった人達の上に成り立っていることを、あまりにも知らなさすぎる事に恥ずかしさを憶えずにはいられませんでした。毎年、成人式で騒ぎ起こしている子供大人の皆様には是非「男たちの大和 YAMATO」を観て頂きたいと思いますヨ。

まぁ、かといって不満が無いのかって訳ではなくて、特定のアジア地域の皆様(えらい人向け)に配慮したのか、当時の思想的なものにはキッチリと蓋をしているように思えました。ここ数年右傾化したといっても、太平洋戦争(大東亜戦争)を日本だけの視点で描くには、まだまだタブーがあるんだなと思いましたヨ。ただ、現時点で、ここまで描けた(当時の日本兵の名誉を回復できた)ということは、評価に値する快挙だと思います。ただし、エンドロールの後の長渕剛の歌にのせて思想を映像で語ったのは余計。アレでなんか映画のテーマが別の所にそらされた感じがします。全編素晴らしかっただけに余計に目立ってしまったと思います。

で、ちょっと話は脱線するのですが、この映画、自分と同じ世代のスタッフが作っているのか、随所に「宇宙戦艦ヤマト」風味が漂うのが、なんか心地よかったですね。ヒロイン(鈴木京香)を戦艦大和の沈没地点へと漁船で連れて行く老船長(仲代達也)と少年のぐたりなんかは、「宇宙戦艦ヤマト」の冒頭で戦艦大和の出撃を見送るシーンとダブっていましたし、恋人や家族と最後の別れをした乗組員を乗せて沖縄に出撃する戦艦大和のシーンでは、心の中で「宇宙戦艦ヤマト」のテーマが鳴っておりました。主人公を含む戦艦大和の乗組員なんかも、沖田艦長や古代進、島大介に見えてくるし...。戦艦大和沈没までの激しい戦闘シーンは「さらば宇宙戦艦ヤマト」や「宇宙戦艦ヤマト 完結編」の悲壮感漂う戦闘シーンを思い起こさせるてくれましたよ。もう、劇場を出た後は、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズを一気に見たような感覚でしたね。戦艦大和が沈む直前、長官室に消えていく艦隊司令長官(渡哲也)の後ろ姿が沖田艦長に見えたのは、自分だけではないでしょう。

で、ふと思うと、「男たちの大和 YAMATO」も「宇宙戦艦ヤマト」も語っているテーマは同じなんじゃないかと思うわけですよ。「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌の2コーラス目に「地球を救う使命を帯びて戦う男もえるロマン、誰かがこれをやらねばならぬ期待の人が俺達ならば」ってフレーズがあるのですが、まんま「男たちの大和 YAMATO」にもあてはまりますよね。実は、戦後、当時のことを封印しようとしていた日本で、宇宙に舞台を変えて、日本の戦争を描いていたから「宇宙戦艦ヤマト」はヒットしたんだと言うことが、「男たちの大和 YAMATO」を観て分かりましたヨ。

早く、「新・宇宙戦艦ヤマト 復活編」観たいなぁ...。(公開されるんかいな?)

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おすすめ平均 star
starほとんどの登場人物は実在した
starなかなか感動
star勘違いされやすいかもしれない
star面白おかしく見ないで...
star評価が難しい・・・・・・・・・・・

by G-Tools , 2006/09/02

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男たちの大和 / YAMATO
辺見じゅん 佐藤純彌 反町隆史
東映 2006-08-04
おすすめ平均 star
starこの時代にしてはよくやった方なのでは
star戦争に善悪はあるのか?
starドキュメンタリータッチのみで制作すべきです
starいいきっかけに...
starこの時代に何を感じれますか?

by G-Tools , 2006/09/02

コメント [2]

日本で戦争テーマの大衆向けドラマといえば、昔から大体似たようなプロットが多いです。私はもう辟易していますが、初めてこのようなパターンの作品を見た方には未だに新鮮なのかなと思いました。実際の海戦を体験した方の回顧談はあまりの悲惨さに思わず戦慄させられる内容でしたが、映画の場合は美しく勇壮に描いてきれいに涙を流せるようなスタイルにしないとヒットは望めないということなのでしょう。

>匿名さん
辟易しているなら「男たちの大和 YAMATO」も観なければ良かったのではないですか?
個人的には、旧日本兵を、戦争に行かされた可愛そうな人だけだったという表現から、日本の将来のために勇敢に戦った人もいたという表現の変化は十分に新鮮に感じましたヨ。戦闘シーンで大和の甲板上が血の海になる表現は実際の悲惨さの1割にも満たないかも知れないですが、自分にとっては十分すぎる程でしたし、あれ以上するとそれだけしか印象に残らない映画になってしまう恐れもありますし、上映年齢制限に引っかかってしまってはこういう映画は意味がないと思います。テーマを語る為に何処をとって何処を捨てるかというのは映画の宿命です。そこらへんも多少理解して観るのが良いかと自分は思ってます。

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このページは、naganagaが2006年1月10日 18:43に書いたブログ記事です。

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