Movie
「容疑者 室井慎次」は、シリーズ中最もスルメな映画かも。
同じ「踊る大捜査線」シリーズからスピンオフし、半年前に公開された「交渉人 真下正義」の公開の時に、エンドロール後流れた予告編を観て、次の「容疑者 室井慎次」は、エンターテイメントに徹した「交渉人 真下正義」とは趣の異なる作品になりそうだと思ったんですよね。主人公である室井慎次は、警察の高級官僚で、「踊る大捜査線」シリーズでは現場に出てるより捜査本部で座って指示を出しているって印象の方が強いキャラクターですからね。これは間違いなく地味だというのは確信してましたヨ。
「踊る大捜査線」シリーズの陽の部分を取り出し現場の人間たちの奮闘を描いた「交渉人 真下正義」とは対照的に、陰の部分である警察上部組織のドロドロな関係をメインにして作品化している為、派手なアクションシーンとか、コメディシーンは殆ど無かったので「踊る大捜査線」シリーズっぽさは薄いかなと思います。随所に挿入される小ネタや、敵役となるキャラクターとの頭脳戦が、「踊る大捜査線」なんだってことを辛うじて保ってたって感じですね。
今までは、現場の警察官たちの足を引っ張る警察の高級官僚達は、物語に厚みを与える為だけの存在だったのがメインになっているので仕方ないのですが、室井の出世ライバル新城を始め、この映画の主人公を取り巻く人達は腹に一物を抱えた人だらけなんで、まぁ、しゃべらないわ、説明不足だわで、観客の方がシーンの雰囲気や、セリフの間から、キャラクターの心情を読み取る事をしないといけないので、大変でした。ただ、高級官僚達の保身と無能ぶりは相も変わらずって感じで、敵役の灰島を通して、日本の官僚をおちょくっているのが面白かったですね。
しかし、敵役灰島と灰島法律事務所のスタッフも、どこかのカルト教団のようで不気味。ある意味、金という神様を崇めた為に社会正義すら曲げてしまう権力を持った人達は、選ばれた人間という意識も相まって、ある意味カルト教を信仰する人達と同じだと言うことなのかな。エリートの社会って、こういう人達の伏魔殿なのかと思いながら、日本の将来を考えると鬱になりそうですな。
実際には、もっともらしい正義を振りかざしている人達に中から、こういう人種を見分けるのって、映画みたいに分かり易くないので、とっても難しいんですけどね。
こういう世界に居ても、純粋に警察官であることをやめない主人公の室井は八方から追い詰められていくのですが、室井の弁護士としてペアを組むことになる小原や、出世ライバルの新城や沖田、工藤刑事率いる新宿北署の現場の警察官たちが、真実に追い求めて過程が、緊張感があり独特の面白さがありました。ただ、工藤刑事って「交渉人 真下正義」の木島刑事とキャラかぶっちゃってのが、ちょっと残念だったなぁ。
チョイ役の公安の人を、大杉蓮さんがやっていたのが気になってます。次の作品で何か重要な役回りしそうな予感。どうなるのか今後が楽しみです。
後、小原が過去のトラウマを乗り越え、一人前の弁護士として成長していく物語も含まれていて、作風が地味な割に、意外と盛りだくさんの内容だったんだなぁと、観終わった後、改めて思うと以外と深い作品です。何度か繰り返してみるとイロイロと発見がありそうです。そういう意味ではビデオ向けのスルメ映画なのかも。
それと、「交渉人 真下正義」の後日談が、物語の各所で語られているのですが、どうも犯人は死んでなくて逃げられているようなので、2作目がありそうな予感です。すみれさん出してくれないかなぁと密かに思ってます。
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- おすすめ平均
- よかったです
- ひどいナレーション
- ちょっとがっかり
- 室井さんの室井さんによる 室井さんのための映画
- 室井さんらしい感じ・・
by G-Tools , 2006/09/02