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新しい試みとして「ローレライ」は成功していると思う。

ローレライ

個人的に、あれだけ期待するって言っていた「ローレライ」なんですが、色々都合がつかず公開後1週経ってようやく観に行けました。午前中1回目の上映だった為か、客入りはまばらだったんです。正直、この時、「もしかして期待はずれか?」という不安が頭をよぎったのですヨ。全編見終わった時には、そんな不安だった気持ちを抱いていたことすら忘れてましたけどね。個人的には期待は裏切られなかった映画です。映画館から出たときは、絹見艦長の気分でしたよ。こんな映画は久しぶりです。

公開前、書店の棚に原作「終戦のローレライ」の分厚い2冊を見つけた時、26話(30分)ぐらいのテレビシリーズを再編集したような、場面展開の早い映画になるなとは思っていたのですが、その予想は的中しましたね。正直、原作に書かれている膨大な量のエピソードをうまく約2時間の尺に納めるため、重要なセリフやら、設定話やら、短くまとめられてキーワードみたいになっているし、画面で説明できるところは、あえてセリフでは説明していないので、シーンは凄いテンポで流れていきます。ある意味、観客の処理能力が試される作品です。

ただ、絹見艦長と浅倉大佐との対決シーンや、折笠とパウラとの心の交流など、物語の核心に迫る重要なシーンにはちゃんと時間を割いているので、長編の原作にした映画にありがちな、削り過ぎて話がペランペランに軽くなり訳が分からなくなっていないのが、せめてもの救いでした。なんとか制作者サイドが言いたかった事は十分理解できました。浅倉大佐の「国家として切腹するために東京に原爆を落とす」理論は、覚悟のない現代日本人に向けた、痛烈なメッセージとして心に残っています。

しかし、やっぱりどっかにしわ寄せは来るモノで、泣かせるシーンも盛り上がりが薄くなっていて、泣くヒマを与えぬ作劇なっていましたね。重要人物が死ぬのに全く引っ張らないので、この人なんだったのって思ってしまいましたヨ。登場人物に感情移入しないと楽しめないタイプの観客はツライんじゃないかな。お陰で、ちょっと絹見艦長の人の命を大切にする思想がぼやけてしまったのが残念かな。でも、個人的には戦争モノでの人の死の描き方で、過剰に「さぁ、泣け。」っていうのは冷めちゃうたちなんで、下手に美化せず呆気ないぐらいの方がいいかな。しかし、それを補ってあまりあるおっさんキャラクター達の個性の立ち方は魅力的ですね。格好良かったです。できれば、このおっちゃん達が活躍する「ローレライ2-伊507日本帰還編-」を作ってくれると嬉しいかも。

次に、この映画の最大のキモは、なんといっても戦闘シーンですね。特撮もハリウッドの予算規模からすると1/10の予算なんで間違いなくしょぼい筈なんですが、ここまで迫力満点な映像を見せられると、見せ方の創意工夫しだいでなんとかなるんですね。兵器のリアルさにこだわり過ぎてない演出だからこその迫力なんでしょう。どこを捨てて、どこを採るか、そのさじ加減が絶妙なんだと思いますよ。リアルな演出(正直、地味だと思う)の方はハリウッドの同系の作品が散々やり尽くしているので、せっかく作るんだったら日本独自の新たなアプローチをしなきゃね。同じもの作ったって仕方ないでしょう。この戦闘シーンだけで映画館に見に来た価値はあると思いました。もし、日本アカデミー大賞に特殊撮影賞があれば、間違いなく受賞できると思います。

それと、話的には、過去のアニメ作品を思わせるシーンが多くあるんですが、パクったというより意図的に仕掛けられたモノのように感じるんです。ここはこういう展開をして欲しいなぁと思ったら、ちゃんとそうしてくれる気持ち良さって言うのもあるんですよ、やっぱり。ここのところ日本のアニメからアイディアを持ってくるハリウッド作品が多いですが、なんかそういう気持ちよさって言うのが無くて違和感があるんですよね。どうして、あの作品とこの作品をくっつけるかとかね。「ローレライ」を見ていると違和感なく組み込むというのはこういう事なんだと思います。

ただ、アニメ的な要素を組み込んでいる為に「ローレライ」ってかなりアニメ作品の様に大風呂敷と破天荒な内容なんで、かなりマンガっぽいです。アニメ作品っぽい演出も目立つので、情報過多のアニメ作品に慣れた人とそうでない人とでは、恐らく感じる面白さが違うことは間違いありません。まぁ、アニメ関係者多く関わっているので仕方ないんですけどね。正直、ハッキリと「おもしろい」派と「おもしろくない」派に真っ二つに分かれる作品なんじゃないですかね。特に映画好きはたまらなく嫌いな作品でしょう。しかし、この「ローレライ」制作者側は、それを意図してやっている訳で、そういう映画好きの反応も折り込み済みだと思います。アニメ演出の方法を用いて作られた作品が、どの程度一般に受け入れられるか実験的な側面もあるでしょうから。

全編通して観て思うのは、日本の特撮映画としては戦闘シーンの尺が長い(この部分はドラマがない)ので、実質ドラマ部分は1時間前後しかない中で、あの長い話をよくココまでまとめたなと思いますよ。過去の長い話の原作を短くしてグダグタにしちゃった作品(最近では「DEVILMAN」)を思い返すと、「ローレライ」は、ここ数年作られた日本映画の特撮作品の中では、1、2を争う面白い作品に仕上がっていると思います。見終わった後ふと思ったんですが、「ローレライ」を設定だけ変えて同じ内容で、キャストをアメリカ人俳優に変更してハリウッド映画としてリメイクして公開したら、けっこうヒットしそうに思えます。それくらい、構成は悪くないと思いますヨ。やっぱり、空想モノをやらせるとアニメ畑の人間に一日の長があると思えてなりません。出来れば、この作品を契機にしてアニメ畑出身の監督で制作された実写作品が数多く制作されれば嬉しいですね。

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ローレライ
福井晴敏 樋口真嗣 役所広司
ポニーキャニオン 2006-07-19
売り上げランキング : 2201
おすすめ平均 star
starメチャ好き!
star駄作では
star結構おもしろかった
star日本軍の魚雷は、世界1のの破壊力
star個人的には好きだな

by G-Tools , 2006/10/24

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ローレライ スタンダード・エディション
福井晴敏 樋口真嗣 役所広司
ポニーキャニオン 2005-08-19
売り上げランキング : 4111
おすすめ平均 star
starほんとは星ゼロ
star「戦争映画」とは・・・。
starエヴァンゲリオン+マクロス+沈黙の艦隊=元ネタ
starはて......さて
star人間ドラマがチープ

by G-Tools , 2006/10/24

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ローレライ プレミアム・エディション (初回限定生産)
福井晴敏 樋口真嗣 役所広司
ポニーキャニオン 2005-08-19
売り上げランキング : 8731
おすすめ平均 star
star1枚の写真
star"仲間"そして"未来"
star国を守る者たち
starかんがえごと
star自分はこの映画が好きなんだけど・・・

by G-Tools , 2006/10/24

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終戦のローレライ〈1〉
福井 晴敏
講談社 2005-01
売り上げランキング : 91447
おすすめ平均 star
star映像にはできない戦争の醜さ
starまだ2巻目ですが・・・
star非常に面白かったです。
star終戦を舞台にしたガンダムです
star重厚に作り上げられた傑作

by G-Tools , 2006/10/24

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終戦のローレライ〈2〉
福井 晴敏
講談社 2005-01
売り上げランキング : 92881
おすすめ平均 star
star胸が熱くなりました!!
star惜しむらくは、少々非現実的
starう〜ん、羨ましい。
star読書の喜びを実感できた作品
star歴史を弄ぶな

by G-Tools , 2006/10/24

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終戦のローレライ〈3〉
福井 晴敏
講談社 2005-02
売り上げランキング : 93148
おすすめ平均 star
starノンフィクションとフィクションの絶妙なハーモニー
star南国で読んだ『椰子の実』のくだり
starう〜ん、羨ましい。
starこのようなすばらしい作品に出会えるから、読書はやめられない
star"揺れ"

by G-Tools , 2006/10/24

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終戦のローレライ〈4〉
福井 晴敏
講談社 2005-02
売り上げランキング : 92587
おすすめ平均 star
star椰子の実
starすぐれた終章
star読んで損した気分
star平和ボケした国に喝を入れる超大作。
starはっきり言って

by G-Tools , 2006/10/24

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終戦のローレライ フィギュア付きBOXセット 全4巻
福井 晴敏
講談社 2005-02
売り上げランキング : 111400
おすすめ平均 star
star今の日本を見つめ直せる良作
star羨ましい・実に羨ましい。
star二巻までは、最高に面白かったのですが・・・
star素敵!
star観賞用で満足。

by G-Tools , 2006/10/24

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終戦のローレライ 上
福井 晴敏
講談社 2002-12-10
売り上げランキング : 123423
おすすめ平均 star
star行間を楽みたいのにぃ
starタイムスリップよりすごい設定
star良く出来た話であるが
star冷めない興奮
star映画版は忘れましょう・・・

by G-Tools , 2006/10/24

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終戦のローレライ 下
福井 晴敏
講談社 2002-12-10
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おすすめ平均 star
star映画には出来ません・・・
star泣けちゃいますね
starラストは圧巻
starもう最高。
starすごい量なのにとても読みやすかった

by G-Tools , 2006/10/24

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このページは、naganagaが2005年3月15日 17:32に書いたブログ記事です。

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