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「DEVILMAN」に見る、日本のVFX映画の可能性と限界。
「キューティーハニー」「けっこう仮面」に続く、今年3本目になる永井豪原作の映画「DEVILMAN」に行ってきました。毎回、アニメ以外の邦画を見に行くときは、あまり過度な期待をせずに劇場に行くんですが、今回は、事前に原作の内容を短い上映時間に詰め込んでいるということを知ってしまったので、中だるみの少なくて長い話の原作をどう料理しているのかに興味を持っていました。後、東映アニメーションも制作に関わっているというVFXの出来も興味があるところです。
しかし、実際、見終わってみると、日本のVFX映画の可能性と限界を同時に感じることの出来る映画になっているように思えました。ある意味、「キューティーハニー」と対極に位置する作品と評してもいいかもしれません。
基本的に、この「DEVILMAN」はアクションで押せ押せの映画ではありません。かなりメッセージ性(作家性)の強いストーリー重視の映画です。正直、アクション映画と思うとかなり不満の残る内容ですね。
人間の差別意識を浮き彫りにした原作のテイストは、良く再現されていていました。後半のデーモン族の侵略に怯えた人類が、同じ人間すらも疑念を抱き自滅の道を突き進んでいく過程は、背筋がゾッとするほどの恐ろしさを感じてしまいました。
それは、現実に戦争が起きるときの過程と重なって見えたからです。あそこの国が軍拡をしている。もしかしたら自分達の国(土地)を攻撃するかもしれない。不安だから、先に攻撃してしまえ。もしかしたら、ある国のスパイはあいつかもしれないから、危険が及ぶのが不安だから、殺してしまえ。という自分達と違う者に遭遇し、差別意識が人間を攻撃的に変えてしまう心理が赤裸々に描かれているのは、実生活で国家レベルから個人レベルまで毎日のように感じていると、かなり気持ち悪い感覚にとらわれてしまいました。それと対比させて、牧村家の人たちと主人公を関係を対比させる演出は、観客に、このテーマを考えさせる上では良くできているとは思いました。ただし「デビルマン」という題材でなければね。
恐らく、この部分に時間を多くかけているので、監督が一番見せたかったんでしょう。(予算が尽きたのかVFXを多用したアクションシーンは申し訳程度の分量しか作れなかったので、かなり強引に引き延ばすことでつないだやっつけ仕事のようにも思える)けど、あまりのしつこさと説教臭くささに最後の方はかなりしらけてしまいました。監督の自慰的な部分を見せられ過ぎ、エンターテイメント作品なんだということをもうちょっと考えて欲しいです。ただ、監督の自慰行為が多く見られることが日本映画の特徴とも言えるので、この作品も典型的な日本映画の王道を行っている事になるのかもしれませんね。
こんな事をするぐらいなら、話は二部作か三部作ぐらいにして、VFXは「キューティーハニー」のようなチープさでもいいからアクション(ジェットコースター)映画として構成した方が良かったかもしれませんね。観客の「デビルマン」に対する感覚はアニメのイメージが強いので間違いなくアクションだと思いますよ。恐らくヒットさせる自信がないから1本に強引に詰め込んでしまう構成になっちゃたんでしょうね。東映のオリジナル特撮映画はヒットしないというトラウマがそうさせるのかもしれません。
後、劇中の所々に出てくる客寄せパンダ目的の客演は、雰囲気ぶち壊しになることが多いのでハッキリ言っていらないですね。冨永愛と小林幸子にはちょっとした怒りを感じてしまいましたヨ。えっ、主役級でも演技がイモなんで既に雰囲気ぶち壊してるって、チッチッ、それは邦画では当たり前のことなんで言わない決まりなんですよ。
デビルマン対デーモンのVFXシーンは出来も良くてスゴイって言葉を使ってもいいんですね。この調子で進化していってくれれば将来邦画でもスゴイものを観れる予感がします。モーションキャプチャーを使ってないシーンも違和感なくアニメ大国日本の底力を感じるには十分だと思います。ただ、いかんせん尺が短い。低予算(アメリカに比べて)でスゴイものを作ろうとすると短くせざるえないのは、単純に資金力の問題なので仕方ないかな。そういう意味では200カット前後でスゴイなんて言ってたらいけないような気もします。逆に「キューティーハニー」のようにチープでも長い方がいいのかといえば違うような気もするし…、これが日本の限界なのかなと感じてしまう寂しさもありました。もっと映画に予算を!!
総評としては、良くできている箇所が多いにもかかわらず、詰め込みすぎであまりにもバランスが悪過ぎる映画といえるでしょう。個人的にはVFX関係でギリギリお金払って見るレベルには達しているとは思いますが、物語のテーマとは違う何か釈然としないものが残るのも事実ですね。自慰するなら庵野監督なみにはじけてみろ!!
--追記--
この映画は、残虐な表現が多いため12才以下の鑑賞に制限がかけられて居るんですが結構小さい子供が居ました。劇場側も親も、もうちょっと考えた方がいいんじゃないですかね。トラウマを抱えて変な大人になっちゃっても知らないぞ〜。
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