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別の意味で泣けた「CASSHERN」でした。

世間では宇多田ヒカルの旦那として知られる紀里谷和明の初監督作「CASSHERN」を観に行ってきました。この作品、往年のアニメ「新造人間キャシャーン」を原作としているので一見娯楽作品に思えますが、実際観てみると、もう完璧に芸術映画でした。画面は絵画的で凄く綺麗なんですが、演出は斬新すぎて、観客をどんどんとおいておきぼりする芸術映画にありがちな自己陶酔型の作品でした。この手の作品が好きな人じゃないと辛いかなぁ。

全体の尺が2時間20分と結構長めの映画で、話はかなりまったりと進行していきます。悪く言えば退屈なぐらいに。特に、アンドロ軍団とキャシャーン誕生までが長いこと、正確に時間を計ってはいないので感覚なんですが、全体の半分ぐらい使ってたように感じました。しかも、その部分は映像を使って基本設定を見せようとしているのですが、何がなにやらさっぱりで、長々と芸術的で説明不足な映像を見させられたあげくに最後はご丁寧にセリフで説明してくれる訳ですね。けど、それって長々と芸術的で説明不足な映像を見せられた意味無いヤン。挙げ句、その設定はクライマックスで半分意味ないし…。

で、やっとこさアンドロ軍団とキャシャーン誕生して、戦闘シーンが30分前後、連続して続くんですが、実はこのシーンの演出って平成ガメラシリーズの特技監督で有名になった樋口真嗣監督(現在「ローレライ」制作中)がやっています。ロボットを素手で叩き潰すアニメ版のキャシャーンの華麗な動きを再現されていて、その迫力満点の戦闘シーンは面白かったです。紀里谷監督自身の手も入っているので、ここだけ演出に違和感があるようになっていなかったので、エンドテロップを見るまで気が付きませんでした。

その後はドラマと軽い戦闘シーンが続きます。ここらへんで作品のテーマである。「なぜ人は戦うのか」がよりストレートに出てくるのですが、前の段階でくどくど色々詰め込みすぎたお陰で、何を訴えたいのかよく分かりませんでした。憎しみが生み出す戦い連鎖ってこと? 人間の業に関することを言いたかったのかな? 今のイラク戦争やらテロリズムとかに対して批判してるな〜くらいは理解しました。
キャシャーンが絡む戦闘シーンはさっきまで嘘だったの如く地味に展開します。主人公なのに、しかも最後まで…。それ以外では、それなりの迫力のある戦闘シーンではありましたよ。そんでもって、ブライキング・ボスと対峙してからは、打ち切りで話数が足りなくなったアニメのごとく、設定をしゃべることしゃべること。最後は別惑星(輪廻転生して全てリセット)パターンで結論から逃げてしまいました。いやはや庵野秀明監督のマネをせんでもええのに…。
で、あの一番よく解らなかった正体不明のメカ稲妻っていったいなんなの?

基本的に斬新だったと思うのは映像表現だけでした。芸術映画として見ると、素晴らしい仕上がりだと思いますが、その映像表現も娯楽映画として観ると、逆にこれで良かったとは思えなくなってしまうのが辛いところです。舞台設定やデザイン、話の展開など過去に制作されたアニメ作品を思わせる所が多々あったのも残念なところです。アニメ作品を観た事が無い人には独特の世界観を構築しているように見えるでしょうな。個人的には和風サイバーパンクはもういいです。
どうにもCGも安っぽいし、同じ低予算CG映画の「APPLE SEED」が出来がよかっただけに、より酷く見えてしまうのは自分だけでしょうか?
「今までの日本映画にはなかった方法論で作られた映画なので好き嫌いが分れるかもしれません。」と試写会場でおっしゃっていた紀里谷監督には申し訳ありませんが、日本映画低迷期に乱発された観客そっちのけで監督の自慰炸裂の文芸作品と同じにおいを感じてしまいました。

まぁ、この「CASSHERN」は話よりもまず映像ありきです。一言で言うと芸術映画に娯楽映画的要素を加えて出来た世にも珍しい実験作品というところでしょうか。ある意味1粒で2度美味しいともいえますから、単館上映の芸術映画が好きな方に特にお勧めします。その映像美に酔いしれて下さい。

73年に制作された「新造人間キャシャーン」のリメイク作品として観るんだったら、94年にタツノコプロが自身で制作したビデオ版「キャシャーン」の方が出来がよかったと思うな。あれって30分の尺で4巻の作品だったから、元の話を約2時間でまとめているんですよね。ちゃんと各巻に見せ場も作った上でね。ロボ犬フレンダーもちゃんと出るし…。

とりあえず、紀里谷監督へ「科学忍者隊ガッチャマン」「破裏拳ポリマー」「宇宙の騎士テッカマン」をリメイクしたいなんて絶対に思わないで下さい。お願いします。他意はありません、芸術映画ではない真っ当な娯楽映画が見たいだけです。

コメント [4]

う〜む、いまいちでありましたでするか〜(´ー`;
予告編の絵で期待したのでするが・・
最後は監督の力量なのでするねー(_ _;)タハ

>カントクさん
内容がイマサンぐらいなもので、映像は綺麗です。(安っぽいCGのあります。)
環境ビデオ代わりに流しておくとおしゃれでいいかもしれません。
最後の宇多田ヒカルの曲はいいですよ。

見てきましたでする〜
眠かったでする〜(´ー`;タハハ

>カントクさん
やっぱりでしたか〜。実は自分の途中で凄く眠くなりました。これは秘密です。

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このページは、naganagaが2004年4月26日 18:16に書いたブログ記事です。

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