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イノセンス観てきました。
世界的にヒットして日本のアニメが世界に認められるようになった草分け的存在の作品である「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」の第2弾、「イノセンス」を観てきました。押井守監督の作品の第2弾は、第1弾ほどの派手なアクションはあまりなく、まず間違いなくセリフ中心の作劇になることは分かっていたので、その難解なセリフと押井監督独特の世界観を久しぶりに楽しもうと思い映画館の扉を通り抜けました。
派手なアクションはテレビシリーズの「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」で十分堪能しているので、自分的には今回の「イノセンス」はアクション重視ではなくても全然問題無しでした。
作品のテーマは思っていたよりもずっと重かったですね。
人間の脳がコンピュータのネットワークに繋がれ(作品中では電脳と呼称)、全身が作り物のサイボーグや、アンドロイドが当たり前になり、人間と機械との境界線が曖昧になったしまった未来の世界のお話なんですが、観ている自分としては、現代劇のように感じていました。
「イノセンス」の舞台は日本なんですが、なぜか画面には中国様式建築物や漢文が数多く登場します。日本なのに日系という言葉も出てきます。素直に風刺が効いてるなぁと感心してしまいましたよ。
現代の日本って「勝ち馬に乗ってれば大丈夫。」という意識で、アメリカの属国であることを満喫しているわけですが、「イノセンス」の世界では中国が台頭してきて、日本は中国の属国になってしまい総ての日本文化が破壊された国として描かれています。
映画の場合、未来予測は極端な形で描かれることが多いので、実際にはここまでの中国化は無いと思いますが、中国が大国として力を付けたとき、大なり小なり映画と似たような状況に置かれるかもしれません。押井監督の絵に描いた餅と薄ら笑いで観られないほど強烈なビジュアルでした。
作品中で、物語の発端となる殺人事件を起こすアンドロイドにはメイド機能の他に性交機能が付けられているのですが、それを調べているハイミスの女性検死官の目を通して、女性に置き去りにされ無機物に愛情を注ぐ男性の姿や、子供をペット化する母親、お互いを思いやれない利己的な夫婦像、男になりたい女性像などたたみかけるように観客に突きつけていく所などは、押井監督は相変わらず鋭いなぁ〜と、苦笑いをしてしまいました。
けど、あまりにも言葉が難しすぎて観客の半分以上を置き去りにしてましたけどね。
物語の重要なキーパーソンとしてキムという廃人を模した義体に自ら閉じこめた情報屋が出てくるのですが、これが、某巨大掲示板サイトで誹謗中傷や揚げ足取りやってる連中を模してると思ってしまいましたよ。くりかえし、バドーやトグサに攻撃を仕掛けてくるところなんてね。
後、バドーが飼っている犬がなんとも、劇中に出てくる人を模したサイボーグやアンドロイドの方が、犬よりも人間に近い存在なのに、物言わぬ犬の方がバドーの心を癒しているシーンなどは、有償の愛の中に無償の愛を探してのたうち回っている現代人の姿そのものだなと思って、寂しくなってしまいましたよ。なぜか。
映画の最後の最後まで現代人にとっては救いようがない話で固められているから、バドーと少佐、バドーと公安9課の面々を通して描かれる、人と人との愛や信頼の関係が光っている見えるような気がしますが、それは物語として成立するためのスパイスみたいなモノで、人でない人形を通して現代人の病的な部分を表現することが作品テーマだったのかなと思っています。この映画で提起された問題は、まったく解答のないままに物語は終わってしまうので、監督の怠慢だと憤慨する人もいるでしょうが、映画を見終わった後に作品で提起された問題の自分なりの解答を考えてみると面白いと思いますよ。
コメント [7]
onoです
ボクも見に行きましたが、こうやって記事や書き込みがあると、やっぱりもう一度見に行きたくなりますぅ、イノセンス。
記事、うんうん と おお!そう見るか とありまして面白かったです。
<これが更に もう一度見に行け!という動機付けになってしまうわけで(なはは)
>onoさん
自分はこの手の難しい謎解きのような作品が好きなので、ついつい深読みしてしまうんですよね、雑誌とかの押井監督のインタビューなんかを読むと、そこまで考えてないのかなとも思いますが、映画を見てどう感じるかは人それぞれですんで、自分の場合はこれでいいかなと思ってます。
onoさんは「イノセンス」どう見ました?
ワーナーマイカルで上映しているって事で今週末見に行きまふ。
2nd GIGは、政治な話になっていますね〜。
S.A.Cと比べて同じ1話完結だけど流れがあるから
続きはどうなった〜と言う気分はないけど。(汗)
なかなかに興味深く、また難解風な(笑)作品のよふでするね 時々訳の解らないモノを作るけど、今回のはわりとマトモだったのかもでするね(´▽`)
>カントクさん
押井作品の訳解らない系といえば、「天使の卵」「迷宮物件」「赤い眼鏡」等々ありましたね〜。とくに「天使の卵」は何が何やら。今回の「イノセンス」は程良くミックスされていい感じですよ。
こんにちは、夏川です。
そういえば前作といい中国的な雰囲気がたくさんありますね。
今の中国の発展ぶり(一部でしょうけれど)を見ると、
さもありなんです。
それよりも、将来的に渡来するだけの魅力があるのかどうかが心配です。
がんばらねば。
>夏川さん
「イノセンス」の中国表現はエントリーにも書いたような見方をしちゃったのもあるんですが、もう一つ前作より中国表現が強くなっているのは、「マトリックス」対策ではないかと思ってもいるんですよ。似たような内容ですし差別化の意味もあのではないかと思っています。
「イノセンス」を見た後だと、哲学的で難しいなんて言われてた「マトリックス」は難しくも何ともないですな。