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EMIがCD音質の音楽ファイルをDRMフリーで販売。音楽販売は新たな段階へ移行するようです。

先日、AppleのCEOスティーブ・ジョブズ氏が自社で提供する「iTunes Store」での音楽ファイルの取扱いについて、DRM(デジタル著作権管理)は意味がないとする発言を行い、レコード業界からクレームを受けるという事があったのですが、それが、今回のDRMを施さない音楽ファイルの配信への伏線だったとは思ってもみませんでした。しかもCCCD(コピーコントロールCD)導入に積極的だったEMIがパートナーという事、さらに同社の取り扱っているデジタル楽曲のすべてをDRMフリーという形で提供開始という事で3重のオドロキですヨ。全米レコード協会(RIAA)がAppleのDRM技術である「FairPlay」を他社に公開しろと圧力をかけてきたのがコレで無駄になったわけですね。

EMI Group、iTunes StoreでDRMフリーの楽曲を販売へ

EMI GroupがDRM(デジタル権利管理)技術の施されていない、より高音質な楽曲をAppleのiTunes Storeでまもなく販売する。

EMIが現地時間4月2日にプレスカンファレンスで発表したところによると、同社は取り扱っているデジタル楽曲のすべてを、iTunes StoreにおいてDRMフリーの形で提供開始するという。提供開始は5月の予定。

引用先:CNET Japan:ニュース

しかし、そこはApple、ただ単にDRMフリーの音楽ファイルをたれ流す訳ではなくて、ビットレートを256kbpsに引き上げたAAC形式のモノをプレミアム版として1ドル29セント(日本円で約150円)の価格で提供し、従来音質のモノはDRMを施した上で1曲99(日本円で約115円)セントと据え置き価格で提供されるみたいです。僅か30セントほどの上乗せで音質が良く、DRMフリーの音楽ファイルが手に入るとなるとナカナカ魅力的です。

斜めから見ると、恐らくこの上乗せされた30セントは不正コピーがP2Pネットワークに流れた際のレコード会社への保証金というのが本質なんでしょう。将来の高音質化も考えてレコード会社では、マスターから高ビットレートでデジタイズしている筈ですから、手間賃としてはいささか取りすぎだと思うので...。

裏事情の推測はともかく、今まで、DRMによる縛りのお陰で扱いづらい音楽ファイルを嫌って、法的に問題のある音楽ファイルを、P2Pソフトで入手していた人達のかなりの数が、これで購買層に廻ると予想できますね。記事によると、EMIが社内で行ったテストによると、高音質でDRMフリーの音楽ファイルは、DRM付きで音質の劣る音楽ファイルよりも10倍よく売れるとの結果が得られたんだそうですヨ。

Appleとしては、これでDRMの解放を盾に進出を阻んできた欧州の国にサービスを提供できるし、他の音楽販売サービスも1番シェアの大きい「iPod」向けに商売が出来るようになったというのは、実現しないと思っていたいただけに大きいインパクトですヨ。MS辺りが低迷の「Zune」に活力を与える為、漁夫の利狙いで動き始めそうですな。

後は、聞きたい曲が潤沢に販売(旧譜も含めて)されれば、Appleが思い描くような違法行為であるP2Pソフトでのファイル交換を駆逐できる可能性は高くなるでしょう。残りのユニバーサルミュージックソニーBMG音楽エンタテインメントワーナーミュージック3社はどう動くか、EMIを追従するのか、頑なにDRM付きに固執を続けるのか、見物ですね。RIAAが締め付けにかかったなんてニュースが流れるともっと面白くなるでしょう。

で、問題は、日本の「iTunes Store」でDRMフリーの音楽ファイルが販売されるかって事なんですが、今回の発表で日本での販売価格が発表されていない所をみると、5月から全世界で始まるとされているDRMフリーの音楽ファイル配信も、蚊帳の外っぽいですね。JASRACを筆頭に過剰なぐらい程既得権益を守ることだけに興味を示す日本のコンテンツ業界ですから、見るからに違法行為の温床を作るとしか思えない今回のEMIの決定は拒否反応を示すでしょう。肉を切らせて骨を断つという商売の発想は、今の日本企業はほぼナイに等しいですからね。携帯電話や地デジ放送みたいに著作権保護に腐心する余り、独自に路線に突っ走って、音楽販売サービスが国際的に孤立って事になったりして、日本だけ違法ダウンロードが減りませんでしたって事になったら愚か過ぎて面白過ぎですヨ。

しかし、かくかくしかじか文句たれても、日本のユーザーの声は業界へは届きにくいのが現状で、とりあえず、DRMフリーの音楽ファイルが販売される国に人達に、頑張って買って貰って、DRMフリーでも商売が成立するんだというのを証明できれば、その方向に話が動くという事になると思うので、期待せず待っている方が健全でしょう。

ただ、現時点では、この件に関して日本のAppleからはまだ何の発表もありませんから、もしかしたら、神の啓示か何かがあって5月に日本でもDRMフリーで音楽ファイルが買える可能性はありますけどね。それはそうなったで嬉しいと手放しで喜びますヨ。

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このページは、naganagaが2007年4月 3日 22:39に書いたブログ記事です。

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